こんまり®︎メソッドによって “本当に大切なモノと出会えた” と語る人々を取材する『連載企画:「片づけで人生が変わる」を解き明かす』
第4回はこんまり®︎流 片づけコンサルタントの山口綾子さんをインタビュー。こんまり®︎メソッドの本質的な価値を紐解きます。
今回お話を聞くのは旦那さんとお子さん3人(お兄ちゃんと妹2人)と暮らすママ、山口綾子さんです。
2020年3月から5月に本格的な片づけを始め、同年6月には片づけコンサルタント養成講座を夫婦で受講しています。
最初に家の中を片づけようと思ったのは2019年のこと。友達を家に連れてきた当時小学2年生の息子さんに対して、「家の中が散らかってるから友達を呼んだらダメよ」と叱りつけてしまったというのです。
それに対して息子さんは
「僕だって友達を遊びたいのに、なんでダメなんだよ!」と泣き叫んだそう。
息子が小学校にあがって最初の1年間、私と家族の関係は正直あまり良いとは言えない状態でした。私自身も仕事と家庭の両立で疲れ切っていて……。洗濯を終えた衣類もかごからあふれ、食事のあとの食器類もテーブルに置かれたまま。おもちゃも床に散らばったままで片づける気力もありませんでした。
心に余裕がないから、息子が言うこと・やることに対して「あれはダメ、これもダメ」と一方的に叱りつけてばかり。感情を押し殺し、涙も流さない子どもになっていました。そんな息子が大声で泣き叫びながら私に訴えてくるのを見て、ハッとしたんですよね。
当時のことを思い出すように話してくれた山口さんは、苦い記憶が少し蘇ったのか、わずかに表情を曇らせました。「私のほうが言い訳ばかりだったんですね」そう言葉を続けたあと、一念発起して片づけを始めた頃のエピソードを語ってくれました。
2019年6月に片づけを始めた山口さん。その時はこんまり®メソッドとは異なるメソッドを提唱する講師のもとで学び、3級、2級と資格を取りながら自宅の片づけを進めたそうです。
当初の目的であった「家の中の片づけ」は順調に進み、山口さんも片づけに夢中だったため息子さんへの干渉も和らぐように。結果、ガミガミと叱りつけていた当時に比べれば関係性も良くなっていたといいます。
一方でどんなに片づいても、「求めていたものと何か違う」「この違和感は何だろう?」と、心にモヤモヤが残っていたとも話してくれました。
私、夫との関係も良くなかったんです。口を開けばケンカしてしまう状態で。引っ越しのような大きな出来事があっても夫婦で相談することもなく、どちらか一方が強引に意思決定することがよくありました。息子との関係も、家の中を片づけてからは良くはなったけれど、仲が良いかというとそこまでは言えない感じ。
それが2020年5月、こんまり®メソッドで片づけを終えると、家族の関係性が大きく変わったんです。息子は学校であったことを何でも話してくれるようになり、夫とも一緒に話し合う機会が増えました。家にいるだけで幸せを感じられるようになった今は、心がトゲトゲしかった頃とは180°違う世界を生きているように感じます。
こんまり®メソッドでの片づけを通して得たものは何だったのか。
ときめきを基準にした「モノとの対話」によって、山口さんの「私と私たちの大切なもの」を見つけたストーリーを、インタビューを通して振り返ります。
片づけたあとも「モノが多い」と感じた理由
──息子さんが「家で友だちと遊びたいのに!」と泣き叫んだ出来事があり、山口さんは家の中を片づける決心をしました。片づけはすぐに始めたんですか?
片づけをしようと思ったタイミングで、たまたまSNSで「ハウスツアー」のイベント案内が流れてきたので、まずはそれに参加しました。
整理収納のアドバイザーである専門家の自宅を見学するという内容で、何か得られるものがあるんじゃないかと興味がわいたんです。
──実際に参加してみてどうでしたか?
すごく良かったですよ。その先生の子どもの年齢がちょうどうちの子と同じくらいだったこともあり、子どもがいてもこんなに片づくのかと驚きました。
先生は決してミニマリストではなく、もしかするとうちよりモノが多いんじゃないかと感じられるほど。「それでもこんなにきれいになるなら私もやりたい!」とモチベーションが一気に上がりました。
それからは先生のもとで勉強し、認定資格も取りながら片づけを実践しました。整理と整頓はそれぞれどういう意味で、どちらを先にやればいいのか。
基本的な知識を学ぶことで手順も明確になり、片づけが楽しくなっていた時期です。家族が寝静まった深夜に起き出し、夜明けまで片づけをしていました。
──順調に片づけが進む中、山口さんはこんまり®メソッドと出会い、こんまり®流の片づけ方法に切り替えました。何かきっかけがあったのでしょうか?
2020年3月にコロナが世界的な猛威をふるい、日本も4月に緊急事態宣言が発令され、ステイホームの期間を迎えました。その時にSNSで近藤麻理恵さんのメッセージが流れてきたんです。「ステイホームの時期こそ、こんまりしましょう!」って。
その時にふと、自分が『人生がときめく片づけの魔法』の本を持っていることを思い出して読み直したんです。
──久しぶりに読み返してみて、率直にどんなことを感じましたか?
収納をしてもモノが多く感じるのは、「私がときめくモノを選んでいなかったからだ」とその時は思いました。
ただ、心の底では無意識に「どんなにきれいに片づけをしても理想の自分や環境を手にできていない」という、もどかしさがあったのかもしれません。
好きを受け止め、価値観を共有するということ
──こんまり®メソッドを実践してみて、最初にどんな変化がありましたか?
忘れていた自分らしさを取り戻せた、そんな感覚がありました。私は、息子が小学2年生になるまではユニクロの店舗で働いていたんですね。仕事中に着用する服は自社製品で統一する必要があったので、クローゼットの中もユニクロの服であふれていました。
これをときめき基準で取捨選択するとどうなるのか。実際に片づけに取り掛かると、最終的にほとんどのユニクロの服を手放すことになりました。どうやら価格や着心地にメリットを感じていただけで、ときめいてはいなかったようなんです。
代わりに手元に残ったのは、その時お気に入りだった別ブランドの服です。私の憧れの人が着ているブランドで、それを着た瞬間にときめくのが自分でもわかりました。「そうだ、私はこういう服が好きだったんだ!」って。
──素敵ですね!その後もきっと、色々と変化があったのではないでしょうか?
山場であり、一番の変化を感じたのは小物類の片づけだったと思います。夫がときめいていたマグカップを私が捨てちゃったという印象的なエピソードもありまして……(苦笑)。
こんまり®メソッドの原則として「人のモノには手を出さない」というルールがあるのですが、そのマグカップ自体は私のモノだったので私が判断して良いと思ってしまったんです。
でも実際に使っていたのは夫だったわけで。見た目も花柄なので、なんとなく使ってるだけだろうなと思い込んでいたんですね。
──旦那さんがそのマグカップにときめいていた理由は何だったのでしょう?
大容量なのが気に入っていたそうです。理由があるなんて思わなかったので本当に驚きましたし、誰でも好き・嫌いがあって、ときめく基準もそれぞれなんだなと気づきがありました。
当たり前のことのようですが、その当たり前がわからずにいた。
それからは何でも相談して、お互いにどんな価値観を持っているのかも夫婦で共有するようにしたんですよね。そこから夫との会話も増え、関係性も良くなりました。
そして、もう1つ思い出されるのが息子のことです。ゲームが大好きなのですが、私は全然興味がないこともあって悪だと決めつけていました。
「いつまでもやってないで早く止めなさい!」と一方的に叱りつけたりして。本当に、私はなんて失礼だったんだと反省しました。
──息子さんのときめくものがゲームだと気づいて、何か変化はありましたか?
関係性がすごく良くなりました。自分の好きなことを受け止めてくれる存在だと、もしかしたら思ってくれたのかもしれませんね。
学校での出来事も話してくれるようになりました。何を話してかけても「別に」としか言わなかったのが、何でも話してくれる仲になれて。本当に大きな変化だったと思います。
片づけを終えて思い出した、新婚当初のときめき
──2020年5月に片づけを終えてから3年ほど経ちました。今、山口さんはどんな生活を送っているのか、ぜひ教えてください。
今、私たちは埼玉県から山梨県へ移住をして、家族で仲良く暮らしています。もちろん家の中はときめくものでいっぱいです。面白いもので、実は片づけをする前は捨てようと思っていたダイニングテーブルが、今も暮らしの中にあるんです。
新婚当初、夫と家具屋さんを一緒に見て回った時に見つけた大きな6人掛けのダイニングテーブル。当時、運命だと思えるほどときめいたんですよね。
「友だちが遊びに来たら一緒に食事ができるね」「家族が増えたら一緒にご飯を食べよう」と、未来に想いを馳せながらワクワクする気持ちで購入したテーブル。大きな長方形なので「卓球もできるね!」と笑い合ったこともありました。
それが数年後には色々なモノが乱雑に置かれる物置きのような扱いに。購入当初のワクワクはすっかり消えてしまい、「大きな部屋が狭く感じられて嫌だ。買い換えたい」と思うことすらありました。
そんなダイニングテーブルもきれいに片づけた今、当時思い描いたように家族みんなでワイワイと食事をしたり、友人を招いて料理を並べたり。念願の卓球も実現できました。
あれこれと勝手に感情をぶつけていたのは私でした。それに気づいてからは、まだまだ一緒に暮らしたいと愛着がわき、今でも傷を補修しながら使っています。
──旦那さんともきっと、良い関係性が続いているのかなと感じます。
以前では考えられないほど仲良くなりました。こんまり®流の片づけを終えて、ステイホームの中で私たちは10回目の結婚記念日を迎えたのですが、その時に自宅で手作り料理でパーティーをしたんですね。
昔はどこかのホテルでディナーを食べたりと、非日常の空間じゃないとお祝いなんてできないと思っていたんですけれど、まったくそんなことはありませんでした。
むしろ過去一番の幸せを感じられるほど、素敵な時間を過ごすことができました。写真を見返しても、どこかへ外食に出掛けた時と比べてよっぽど良い笑顔です。
──最後に山口さんにとって、こんまり®流片づけとは何かを教えてください。
忘れかけていた自分の価値観や大切なものに気づかせてくれるものです。息子の好きなものを受け止められるようになり、夫のときめくものを分かち合えるようになった。
娘とは一緒に料理をすることもあり、これから先が楽しみです。
──自分のときめきを大切にするようになったことで、人のときめきも認めることができるようになった。そんなストーリーに触れることができたように思います。
本日は改めて、素敵なお話をありがとうございました!
取材・執筆・編集:株式会社ソレナ