こんまり®︎メソッドによって “本当に大切なモノと出会えた” と語る人々を取材する連載企画:「片づけで人生が変わる」を解き明かす。第3回はこんまり®︎流片づけコンサルタントの髙橋美和さんをインタビュー。こんまり®︎メソッドの本質的な価値を紐解きます。
今回お話を聞かせていただくのは、こんまり®流片づけコンサルタントとして活躍する髙橋美和さんです。
こんまり®メソッドで片づけに取り組んだのは過去2回。それぞれ2015年2月と2018年3月に実施しています。
近藤麻理恵の著書『人生がときめく片づけの魔法』を読んだことがある人であれば、こんな疑問が浮かぶかもしれません。「一度片づけたら、絶対に元に戻らない」と謳っているはずなのに、なぜ2度の片づけをすることになったのか?
その理由は、初回は本を片手に取り組んだ “手探りの片づけ” だったから。「衣類→本類→書類→小物類→思い出品」と進むプロセスで、どうしても最終工程である「思い出品」には着手できなかったそうです。
家の中はモノであふれ、片づけてもすぐに散らかってイライラしてしまう。優しい夫と可愛い子どもが2人いるのだから、私も理想のママでいたい。ただそれだけなのに。
そんな時に出会った『人生がときめく片づけの魔法』は大きな希望でした。「はじめに」を読んで目に飛び込んだのは「一度片づけたら絶対に元に戻らない」「仕事も家庭も、なぜか人生全般がうまくいきはじめる」といった言葉たち。
一気に読み終えた私は、高揚する気持ちそのままに、初めてのこんまり®流片づけを実践しました。
思い出品の片づけこそストップしていたものの、この時点で髙橋さんは「人生がうまくいきはじめる」という感覚が芽生えたといいます。具体的な変化としては、片づけを始めた頃を境に、髙橋さんにぴったりな仕事の話が舞い込むようになったり、新居への引っ越しの話題が出始めたりしたというのです。
では、第2回となる2018年3月の片づけのあとは、髙橋さんにどのような変化があったのでしょうか。インタビューの際に質問をすると、返ってきたのは次の言葉でした。
「片づけコンサルタントにお手伝いをしてもらって、ようやく思い出品を片づけることができました。毎日イライラしていた自分から解放され、幸せな日々を更新することができています。子どもがすぐに部屋を散らかしても大丈夫。片づけに悩むこともなくなりました」
今回は、過去2回のインタビューとは少し異なる感覚、こんまり®メソッドの新たな一面をインタビューを通して感じることができました。
それは、片づけの途中でも一定の効果はあったものの、やはりすべての片づけを終えた2018年以降では明らかに精神面の変化があったこと。片づけに関するリバウンドもなくなったといいます。
こんまり®メソッドを正しくやりきったかどうか。一見してわずかな差異が、なぜここまで大きな違いを生み出すのか。最後にもう1度、髙橋さんの言葉を振り返りつつ、インタビューで語られた全容に踏み込みたいと思います。
最初の片づけでは「ときめき」が何かわかっていなかったんだと思います。私はずっと自分の中に正解がなく、誰かの言葉の中に正解を探す人生を歩んできました。ときめきで選んでいるはずのモノが実際は、母親から見て正しいモノだったり世間的にみて正しいモノだったり……。頭で色々考えるけれど、それは常に「誰かの正解」を探しているだけ。
うつ病を患ってしまったのはそれが原因かもしれません。ちゃんとしなきゃと自分を責めれば責めるほど、子どもにきつく接するようになってしまった。でも思い出品の片づけを終えた頃から、頭ではなく自分の感覚「ときめき」で判断できるようになったんです。もう誰かの正解を探さなくていい。自分の感覚こそが自分だけの正解なのだと気づけた時、本当の意味で私の人生はうまくいきはじめたように思います。
ときめきの感度が高まった、最初の片づけの効果
──1回目の片づけ(2015年)の時点で一定の効果を髙橋さんは実感していました。どこにポイントがあったと感じますか?
本を読みながらの自己流でしたが、すべてのモノの住所が決まって整頓されたことで、頭の中がすっきりしたんですよね。目に飛び込んでくる情報も格段に減って、思考のごちゃつきも少なくなりました。
本当の意味でときめくモノばかりではなかったけれど、少なくともタンスの中が自分の好きな服でいっぱいになったのは嬉しかったし、好きな服を着て過ごすうちに体感も変わったんですよね。「あ、私ってこういう服が好きだったんだ」って。
以前は「お母さんなんだからスカートじゃ動きにくいでしょ」といった具合に、自分の意思とは関係のない “誰かの正解” だけが私の正解でした。
──子どもにイライラする自分が嫌い、理想のママになりたい。そんな悩みを抱えているときに、片づけをしてみようと思ったのはなぜでしょうか?
初めてこんまり®流片づけを知ったのはテレビ番組の再放送か何かでした。こんまりさんが芸能人のお宅で押し入れの中にぴょんと飛び乗って、どんどんモノを外に出す様子がとても強く印象に残っていて。
それに芸能人の方が、部屋が片づくにつれて目をキラキラと輝かせていたのも印象的でした。「そんなにすごい片づけ法なのか!」と興味を持った私は、すぐにこんまりさんの本を購入して一気に読み進めました。
「イライラしたくない」「理想のママでいたい」と思っていた私は、片づけを通して理想の状態を先に手にすることで、今までの悩みも解決できると思っていた気がします。
──最初の片づけでは、家の中も頭の中もすっきりして、自分のときめきを大切にしようと思えるところまで進んだわけですね。
「誰かの正解」が自分の正解じゃないと気づけたことで、考え方や判断基準に大きな変化が生まれました。長女の私は「結婚相手の家に嫁ぐもの」という価値観の下で親に育てられたこともあり、自分たちで家を建てる発想は持てずにいました。
でも「家を建ててもいいはず」とふと思えるようになってからは、偶然にも良い土地を見つけることもできて、親に相談してみたら応援までしてもらえて。自分の心がときめく方向に進むと人生がうまく回り始める実感が得られ始めました。
ただ、ここまでの道のりには時間もかかっていて。最初はお気に入りのキュロットスカートをはいて外出するのにも抵抗があったんです。よそゆきのつもりで買ったのに、普段着にしていたら変な人と思われるんじゃないかとか。
それでも、自分が感じたときめきを大事にして行動してみたんですね。すると「私ってこういう服が好きなんだ……」と少しずつ自覚し始めた、という流れになります。
以前は「ときめき=必要なモノ」と判断していた
──最初の片づけの時点で、こんまり®メソッドの利点を感じていたと思います。改めて「思い出品」の片づけに踏み切ったのはなぜでしょうか?
素晴らしいメソッドだからこそより深く知りたいと思い、片づけコンサルタント養成講座を受けようと考えたことがきっかけです。受講条件を読むと「ご自身のご自宅の片づけを終えていただくこと」とあったため、もう一度片づけにチャレンジしました。
──2回目の片づけで思い出品だけ片づかなかった原因はわかりましたか?
片づけコンサルタントの方に伴走してもらったところ、前工程の衣類や小物類を本当にときめくかどうかで片づけられていないと指摘がありました。以前の私は「ときめくモノ=必要なモノ」という認識だったんです。
「ときめくモノを選ぶって、プレミアムなNo.1やNo.2を選ぶ感覚だよ」と教えてもらい、こんまり®メソッドへの理解を深めていきました。そのうちにだんだんと写真を触った瞬間に「重い・軽い」がわかるようになって。そこからは片づけもあっという間に進みました。
──写真が重い・軽い、ですか?
不思議ですが、本当にそういう感覚があって。実際に重く感じる写真を見てみると、私は端っこに豆粒のように映ってるだけとか(笑)。全然ときめきで判断できていなかったなと今では思います。おかげで母が作った「私の誕生〜中学生まで」のアルバムも無事に片づけることができました。
片づけを終えた私に起きた「自分の身体で感じる世界」へのシフト
──すべての片づけを終えてみて、どのような変化がありましたか?
最初の片づけで重要だったのは「誰かの正解ではなく自分の正解(ときめき)を大事にしていいんだ」という気づきがあったことです。ただ、気づきはあったものの、まだ「外に答えを求める」という考え方が残ってしまっていて、頭の中がごちゃつくことがありました。
2回目に最後まで片づけを終えたあとは、不思議と頭の中がすっきりして心も落ち着いていた。好きなBGMを部屋で流しながら大好きな珈琲を淹れていた時、ふと「理想の生活が叶った」と気づいたんですよね。それは、私が初めてこんまりさんの本を読んだ時に願った理想そのものでした。
もちろん生きていれば大変なことも辛いこともあります。でも答えを外に求めず、自分の中にある答え(ときめき)を基準にして生きれば、どんなに要領が悪くても、全部願った未来につながるんだと思えるようになりました。
家族それぞれの誕生日、年間で4回、みんなでお祝いをして写真を撮るのですが、毎回「今が一番幸せ」という気持ちで迎えることができています。こんまり流片づけに出会えてよかった。ときめくモノに囲まれて環境や人に恵まれて、今の暮らしがあります。こんまり®流片づけは、私にとってまさに「私を幸せにしてくれるツール」だったのだと思います。
──過去2回のインタビューは、モノとの対話により自分と向き合うシーンが多くありました。それが髙橋さんの場合、頭で考えるより身体でときめくモノに触れることで「自分の感覚」を取り戻すことができた。そんな物語だったように感じています。
本日は改めて、素敵なお話をありがとうございました!
取材・執筆・編集:株式会社ソレナ